一時退院の時、突然 「お母さん!右の顔が動かない!なんで?なんでうごかねんだ!俺もうヤダ!」 一生懸命動かそうとするが全く動きませんでした。
パニックになってしまいどうしていいのかわからなくなっていました。私もただオドオドするばかりで、足が震えてやっとの思いでがんセンターに電話をして、とにかくすぐに病院に向かいました。
病院に着いて、先生から診ていただいたら、「ベル麻痺・末梢性顔面神経麻痺」 で治るらしく、とにかく治ると聞いて敏行も落ち着き、私も安心しました。
ところが、耳鼻科の先生に、「がん細胞が悪さしたんなら治らないなぁ」 と言われ、
検査したら、やはりがん細胞の仕業だとわかりましたが、主治医の先生は、
「悪いところを治すと絶対動くから大丈夫!でも月単位で見ていくしかないからいつ治りますよ。とは言えないけど、自然に動くようになるから心配いらないよ。」 とおっしゃっているのに敏行は、「どっちを信じればいん……」 治らないと言われたことにすごくショックを受けていました。
何日たっても動こうとしない、ピクリとも動かない顔に苛立ちを覚え、「お母さん、笑うこともできないんだよ!寝るときも目が閉じないし、うがいするときも唇押さえないといけないんだよ!口がちゃんと開かないからご飯もたべにくい!わかる?」 実際寝るときに眼帯をしないと目が閉じないので、辛い思いをしていました。
「俺、顔が動かないんなら、死んだほうがいい……」
自殺でもするような落ち込みようでした。私も 「絶対治るから!先生を信じて頑張ろう!」 としか言えませんでした。
何もできない……敏行の胸に届くようなことを言ってあげられない自分が情けなくて……。
それから 4、5ヶ月して、自分でも気付かないうちに少しずつ動いていました。
ホッと安心したのもつかの間で、移植のための 「前治療」 を始めるための放射線照射の初日に、前回と反対側の顔が麻痺を起こしてしまいました。
これから辛い前治療が始まるのに追い討ちをかけて敏行を苦しめました。
ですが、必ず動くことを確信していたのでクヨクヨ考えず 「俺前向きに頑張る!」 と言ってくれたのがすごく嬉しく安心しました。
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